徒然なるままに in Niagara Falls

自然豊かなナイアガラでの生活を綴ります

移民国家とは。

個人的な見解で、カナダという国に感じたことです。

まず、移民国家として成立している国です。毎年、約30万人ほどの新規移民者が、カナダに移住してきています。国によっては、内戦や民族紛争など起き、難民が生まれますが、その難民も積極的に受け入れる国です。

わたしの国籍は、日本です。よく日本の方には誤解を受けるのですが、永住権を持ってカナダに住んでいる日本人です。パスポートは、もちろん日本。日本からカナダに移り、数年住むとカナダの市民権を得る権利ができます。そして、その市民権にアプライし、テストを受けパスするとカナダの市民権が得られ、そこで初めてカナダのパスポートが発行されるのです。ただし、日本国家は二重国籍を許可していません。日本とカナダ、2つの国籍を持つことは、日本人はできません。なので、どちらかの国籍を選ばないといけなくなるわけです。もちろん、カナダ側は2つの国籍を持つことは、問題なしです。中国や台湾など、多くのアジア圏での二重国籍は、許されていません。フィリピンは、二重国籍は大丈夫です。フィリピンの友人や同僚は、ほぼカナダとフィリピン二つの国籍を持っています。それは、母国が許可しているからです。

では、市民権と永住権の違いは?というと、一番大きなことは、選挙権がないことです。わたしは、日本人ですからカナダでは選挙権がありません。日本の選挙では、在外選挙で投票することが可能です。そして、パスポートは日本のものだけで、カナダのパスポートは持てません。それでも、何も不自由はないですね。とくに日本のパスポートは、世界最強のパスポートですし。

カナダの永住権保持者には、Parmanent Residencial Card、通称PR カードが発行されます。カナダ国外に出る時には、必ず携帯しカナダ入国の際にパスポートと一緒に見せないとカナダに入国できない場合があります。

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PRカードのサンプル。

5年に一度リニューアルが必要です。それが面倒で市民権に変える人も多いですが、わたしはまだ日本に母がいますので永住権のまま、国籍を変える気持ちは今のところありません。先ほども書いたように、選挙権以外はほぼカナダ人と同じ待遇を受けられます。でも、もし公務員やガバメントの仕事を目指す人は、市民権がないと無理ですね。

多くのバックグラウンドを持つ人々が、同じコミュニティで生活するのですから、それはそれは大変なことも多いです。教育も文化も、言葉も違った環境から来た人々。いろいろなことをすり合わせていかないとトラブルが当然起きます。コロナが起きた時に、カナダ政府の救済金の迅速な対応は、こういった事情があるからだと思いました。お腹がすけば、人のものを奪う人も出てくるでしょう。そういう混乱を出来る限り、防ぎたかったのだと思います。

カナダに来て、一番移民国家ということを強烈に感じた体験があります。まだトロントに住んでいた頃のこと。友人のアパートに行くために、ある駅で降り時間があったので、駅近くのカフェに入りました。そのエリアは、アフリカ人が多く住むエリアで、お店の人もアフリカ人でした。オーダーを取る人がカウンターで、細くて背の高いアフリカ人と話していました。小さな声でボソボソと。笑顔もなく、なんだか暗い感じ。わたしが並んだので、そのほっそりとしたアフリカ人は、カフェの外へと出て行きました。どうやら、仕事でカフェにデリバリーをしていたようです。コーヒーをオーダーしようとお店の人と目が合うと、彼はホッと一息ついてわたしに独り言のように話し出したのです。「今の彼さ、ソマリアの内戦で目の前で家族を殺されたんだって。自分だけ助かり、カナダに難民申請してきたんだってよ。」と話してきました。わたしは、びっくりして声も出ません。するとカウンターの人は、急に笑顔になり注文を聞いてきたのです。おそらく、お店の人も彼の重過ぎる過去を聞き、誰かに吐き出したくなったのではないでしょうか。その時は、とっさにその重過ぎることに何を言っていいかわからず、しかも英語は第二言語のため、ダイレクトな言い方になってしまうため、コメントはせずコーヒーを頼んで、離れました。

それにしても、衝撃でした。日本で、そういう不幸なバックグラウンドを持っている人には、そうそう会わないですよね。その時、思ったんです。カナダは、移民国家。どんなバックグラウンドを持っている人が隣に住むのか、全くわからない国なんだ、ということに。今もいろんな国から来た人々に会うことがありますが、彼ほどの過去を超える人に会ったことはありません。もちろん、直接その方とは言葉を交わさなかったけれども、今でもはっきりと表情を覚えています。わたしは、基本人間はわかりあえない、と考えている人間です。それは昔からで、カナダに来てからは、確信しています。それは、こういった経験の違いがあるからです。日本では、極端な経験の違いは少なかったんですけど、カナダではすごくあります。想像を超える経験をしてきた方は、やはりわかりあえないと思うんです。だからお互いの妥協点を探して、すり合わせていくことが重要だと考えています。あのソマリア人が、カナダで幸せに暮らしていることを祈ります。